【コラム】新築建売住宅で手に入れる賢いマイホーム

家づくりには「家は3回建てて初めて満足のいくものができる」という言葉があります。しかし実際には、3回も家を建てる人はほとんどいません。それほどマイホーム購入は人生で一度あるかないかの大きな決断です。高額な買い物で長期の住宅ローンを組む以上、慎重になるのは当然でしょう。特に若いご夫婦にとっては「失敗は許されない」というプレッシャーも大きいですよね。

とはいえ、こだわりすぎて決断できないままではマイホームは手に入りません。新築建売住宅(分譲住宅)は、注文住宅に比べて価格がリーズナブルで現実的な選択肢です。今回は、夢のマイホームへの理想と現実のバランスをどう取るか、新築建売住宅を選ぶメリット、そして後悔しないためのポイントについて考えてみましょう。

理想のマイホームと現実のギャップ

マイホームに対する理想は人それぞれです。例えば:

立地の理想: 「駅から徒歩5分以内がいい」「子どもの小学校まで徒歩5分圏内」「スーパーが近くに欲しい」「職場までドアツードアで30分以内」…

住まいの理想: 「広いリビングにアイランドキッチン」「南向きで日当たり抜群」「書斎や趣味部屋が欲しい」…

誰しも100点満点の理想を思い描きます。しかし、現実には全てを叶える土地や住宅は極めて希少です。特に好条件が重なる立地は人気が高く、土地そのものが市場に出てきません。たとえ大金を積んでも、持ち主が売らなければ手に入らないのが土地というものです。理想を抱くのは大切ですが、実現できない理想はただの「夢」で終わってしまいます。

また、理想に近い土地があったとしても価格は非常に高額です。資金が潤沢にあるなら別ですが、多くの方にとって予算には限りがあります。夢と現実のバランスを取らなければ、マイホーム購入はいつまで経っても実現しません。

資金と時間の壁を知ろう

夢のマイホームを追い求める上で最大の現実的な問題は、やはり資金力です。最近はウッドショックや人件費高騰の影響もあり、注文住宅の建築コストは年々上昇しています。一般的な注文住宅では坪単価70万円以上は当たり前で、誰もが知る大手ハウスメーカーなら坪単価100万円超えも珍しくありません。例えば、延床30坪(約100㎡)ほどの家を建てるとすれば、建物だけで2,500万~3,000万円は軽くかかります。こだわりの間取りや設備、外構工事まで加えれば、建物だけで4,000万円超というケースも十分あり得ます。

さらに土地代も考えましょう。理想に近い人気エリアの土地は高額で、50坪前後の敷地でも1,500万~2,000万円は覚悟が必要です。仮に土地1,500万円・建物4,000万円となれば、合計5,500万円のマイホーム計画です。諸費用も含めると総額は5,800万円前後になるでしょう。

5,000万円台後半の住宅ローンを組むと、毎月の返済額は大きな負担になります。仮に金利0.9%・35年返済で試算すると毎月約16万円の支払いです(40年ローンでも月14万円台)。これだけの支出があると、日々の生活費や教育資金、将来の老後資金を貯める余裕は限られてしまいます。お子さんのいるご家庭なら、成長に伴う教育費や習い事代もかさみますし、子育てが終われば今度は親世代の老後資金も必要です。将来、公的年金が十分にもらえるか不透明な中、毎月十数万円の住宅ローンを払いながら貯蓄もしていくのは容易ではありません。

さらに言えば、約6,000万円ものローンを一馬力(ご主人の収入のみ)で借りられる方は多くないでしょう。共働きで収入合算しないと難しい額です。つまり、「理想を100%詰め込んだマイホーム」を実現しようとすると、資金面で非常に高いハードルに直面するのです。

お金の問題に加えて、時間の制約も考える必要があります。住宅ローンには完済年齢の上限があり、多くの金融機関で80歳までに返済を終えることが条件です。そのため、35年ローンをフルに利用しようと思えば、逆算して45歳くらいまでに借入を開始しないといけません。

また、多くの方は「80歳完済ギリギリ」よりも65歳~70歳までの完済を希望されるのが現実です。この考え方を踏まえると、無理なくローンを組める適正な購入年齢は30歳前後となり、若いご夫婦が早めに検討を始める大きな理由にもなっています。そしてこの年齢、30歳前後で注文住宅5800万円を単身の住宅ローンで借り入れできる人は多くなく限られます。※年収900万円~

50代以降になると団体信用生命保険(団信)への加入も厳しくなったり、健康面の条件でローンが組めない場合も出てきます。つまり、マイホーム購入には「いつかそのうち」と悠長に構えていられるほどの猶予はないのです。夢を見るのは素敵ですが、資金と時間という現実の壁を踏まえて計画しないと、気づけば住宅ローンを組める適齢期を逃し、「夢のまま」終わってしまうリスクがあります。

新築建売住宅は堅実な選択肢

こうした資金や時間の制約を踏まえると、夢に優先順位をつけた現実的な選択として浮上するのが新築建売住宅です。建売住宅は土地と建物がセットで販売される分譲一戸建てで、注文住宅に比べて価格が割安なのが特徴です。実際、住宅金融支援機構の調査によれば、土地から注文住宅を建てた場合の平均購入価格は全国で約4,700万円ですが、新築建売住宅の平均購入価格は約3,700万円と、平均で1,000万円近く安いというデータもあります。これはエリアにもよりますが、少なくとも同じマイホームでも建売なら大幅に予算を抑えられる可能性が高いことを示しています。

例えば滋賀県長浜市では、新築建売住宅が約2,500万~3,500万円で購入でき、35年ローンなら月々約7万円前後、40年ローンなら約6.5万円前後から返済が可能です。5,800万円の注文住宅のローンと比較すると、毎月の返済額に約8.5万~9万円もの差が生まれます。家計に与える影響は非常に大きく、建売住宅が「現実的な選択肢」である理由がよく分かります。

価格を抑えられる理由は、建売住宅では複数の住宅をまとめて建築したり、建材・設備を大量発注してコストダウンしているためです。また設計や間取りがある程度規格化されていることで工期も短縮でき、人件費も抑えられます。その分、購入者にとって手の届きやすい価格が実現しているのです。決して建売住宅=低品質ではありません。

価格が抑えられるということは、住宅ローンの借入額も少なくて済みます。例えば先ほど5,800万円の例では月16万円の返済でしたが、長浜市で新築建売住宅なら総額2,500~3,500万円台で見つかる物件も多くあります。その場合、月々の返済は約7万円前後までグッと軽くなります。毎月8~9万円の差は家計に大きなゆとりを生みます。これなら、ご主人単独の収入でも無理なく返済できるケースが増え、共働きの場合は片方の収入を丸ごと貯蓄や教育費に回すといった将来設計も描きやすくなるでしょう。

将来のライフプランに余裕が持てるのは新築建売を選ぶ大きなメリットです。家にお金をかけすぎて日々の生活がギリギリ…という状態では、本末転倒ですよね。建売で比較的リーズナブルにマイホームを手に入れれば、子育てや趣味、旅行など人生を楽しむための費用にも余裕が生まれます。さらに言えば、ローンのプレッシャーが小さいと精神的な安心感も違います。マイホームはゴールではなくそこから始まる生活の舞台です。経済的な無理のない範囲で購入することが、長い目で見て「良い買い物だった」と思える鍵になるのです。

もちろん、価格が安いからといって品質が極端に悪いわけではありません。最近の新築建売住宅は建築基準法の性能を満たすのは当然として、断熱性や耐震性など一定の性能を確保した物件も増えています。大手分譲会社の建売なら、住宅性能表示制度で複数項目が最高等級になっているケースもあります。「安い建売=粗悪な家」と一括りにできない時代です。むしろ多くの住宅を手掛けるメーカーだからこそ蓄積されたノウハウがあり、暮らしやすさを考えた間取りプランが取り入れられていることも多いです。新築である以上、設備機器や内装も最新で綺麗ですし、完成物件を実際に見てから「この家に住もう」と判断できる安心感もあります。

こだわりすぎるとチャンスを逃す

新築建売住宅には一点だけ、注文住宅と比べてどうしても叶わない部分があります。それは「100%理想通り」にはならないかもしれない、という点です。あらかじめ完成済み(または建築中)の家を買うため、間取りやデザインをゼロから自分好みに設計することはできません。また、建売は先述のように比較的購入しやすい価格で提供することが前提なので、土地選びにもコスト面の制約があります。つまり、誰もが羨むような駅近や学区人気エリアなどの超好立地の物件は数が限られるのです。

実際、人気の小学校区内や駅徒歩圏の新築建売は、市場に出ても早く売れてしまう傾向があります。あなたが「これは良いな」と思う物件は、他の誰かにとっても魅力的なはず。悩んでいるうちに売れてしまったという話はよく聞きます。現に、不動産会社である私どものお客様でも「気に入ったのに決断が遅れて購入できなかった」「もう少し悩みたくて見送っていたら先に契約されてしまった」と後悔された方が少なからずおられました。

その中で、後から「やっぱりマイホームが欲しい」と視点を切り替えて別の建売を購入された方もいます。そういった方は、当初100点満点を求めていた姿勢を改め、80点でも90点でも合格と考えるようにした結果、無事にマイホームの夢を叶えています。一方で、「100%理想でなければ買わない」とこだわり続けた半数の方は、その後マイホーム取得の熱意自体が薄れてしまい、結局購入に至らなかったケースもあります。長い時間をかけて家探しをしても、理想を追い求めすぎた結果チャンスを逃し、時間的制限の影響を受け、何も手に入らない――これではとてももったいないことです。

厳しい言い方かもしれませんが、完璧な家に出会う可能性は極めて低いです。どんなに高額な注文住宅を建てても、住み始めてみれば「こうすれば良かった」と思う箇所が出てくるものです。大切なのは、100点に届かなくても自分たちにとって及第点の家を手に入れることではないでしょうか。多少の不満点や妥協点があったとしても、マイホームを持つこと自体が人生の安心感や豊かさに繋がります。「あのとき買っておいて良かったね」と将来振り返られる住まいを得ることが、何より価値のあることだと思うのです。かくゆう筆者である「えがおエステートの藤原」は高額な注文住宅を購入し失敗と後悔を経験しております。書けば長くなりますので、興味のある方は直接筆者に聞いてください。

妥協できるポイントを見極めよう

では、具体的にどこを優先し、どこを妥協すべきなのでしょうか。答えはご家族それぞれですが、判断をスムーズにするために条件に優先順位をつけることをおすすめします。まず、ご夫婦で「絶対に譲れない条件」と「妥協できる条件」をリストアップしてみましょう。

優先順位の例:

立地・環境面: 通勤通学の利便性や希望する学区、周辺の治安や生活利便施設の充実度など。

家の広さ・間取り: 部屋数やLDKの広さ、収納スペース、将来家族が増える場合の対応など。

住宅の性能: 耐震等級や断熱性能、設備グレードなど、安全性・快適性に関わる部分。

予算・支払い: 購入予算の上限や月々のローン返済額、頭金やボーナス払いの有無や団信の内容など。

上記のような項目について、「これだけは外せない」「ここはある程度目をつぶれる」という線引きをしてみます。例えば、「子どもの学区は変えたくないが、駅からの距離は多少遠くても構わない」「リビングの広さは妥協したくないが、内装のデザインは自分で工夫できる」「月々の支払いは〇万円以内に抑えたいので、設備は必要最低限でOK」など、自分たちにとっての優先事項が見えてくるでしょう。

妥協というと言葉は悪いですが、前向きに言えばメリハリをつけることです。すべてを100点にするのではなく、重要なポイントにリソースを集中させて他は許容範囲で収めるイメージです。例えば立地を優先するなら、多少建物がコンパクトでも便利な場所を選ぶ。一方、広さや間取り重視なら、駅からバス利用の郊外エリアに目を向けてみる。という具合にです。

新築建売住宅も探せば色々なタイプがあります。分譲戸建てはどうしても郊外が多くなりがちですが、中には駅徒歩圏の物件もありますし、郊外でも大型商業施設が近い便利なニュータウンもあります。建物もシンプルな低価格重視のものから、高断熱高気密の省エネ性能に優れたものなどちょっと個性的なものまで様々です。絶対条件だけはクリアした物件を見つけたら、その他の条件は多少思い描いた理想と違っても「これなら許容範囲かな」と柔軟に捉えてみることが大切です。

そうすることで、今まで選択肢に入ってこなかった物件が急に有力候補になることもあります。たとえば「学区」ばかり気にしていた方が、少しエリアを広げて探したら、子育て環境が整った別の地域に素敵な新築が見つかるかもしれません。「駅から距離がある」と敬遠していた物件も、実際に現地に行ってみたら閑静で暮らしやすく、バス便も便利だったということもあります。ぜひ固定観念にとらわれず視野を広げてみてください。妥協イコール悪ではなく、将来の生活全体を考えた最適解を見つけるプロセスだと考えましょう。

後悔しないマイホーム購入のために

最後に、マイホーム購入で後悔しないための心構えをまとめます。新築建売住宅は価格面での安心感や実物を確認できるメリットがあり、人生設計にフィットしやすい選択肢です。また、最近ニュースでもよく見かけるようになった「建築途中で建築会社が倒産して家が建たない」というリスクを回避しやすいのも新築建売物件の魅力の一つです。しかし大事なのは、「何をもって満足とするか」を自分たちで明確にすることです。

後悔しないポイント:

現実を直視する: 資金計画やローン返済、将来のライフイベントまで含めて無理のない範囲を把握する。夢だけで突っ走らない。理想と現実のバランスを

優先順位を守る: 絶対に譲れない条件だけは死守し、それ以外は柔軟に。すべて満たそうとしないことで選択肢が広がる。

タイミングを逃さない: 「これだ」と思う物件に出会えたら思い切って行動する。縁あって目の前に現れた候補を大切に。後で後悔してもその物件は他人の物になり、次にその物件を購入できるチャンスはほぼありません。

購入後の暮らしをイメージする: 家そのものの点数より、そこに住むことで得られる暮らしの充実を考える。経済的・精神的ゆとりを持てる選択を。

プロの意見も活用: 迷ったら不動産のプロに相談したり、モデルハウスや完成物件の見学で具体的なイメージを掴む。第三者の視点で長所短所を確認する。

マイホームはゴールではなくスタートです。100点満点の家でなくても、そこで家族が笑顔で暮らし、将来に向けた貯蓄もできる生活が送れれば、その家はあなた方にとって満点と言えるでしょう。新築建売住宅は、その実現をぐっと身近にしてくれる賢い買い物です。

「もっと早く決断していればよかった」と後から思うくらいなら、適切なタイミングで勇気を持って一歩踏み出すことも大切です。理想にこだわり過ぎず、現実を見据えて計画すれば、きっと「この家を買ってよかった」と思える日が来るでしょう。マイホーム購入を検討中の皆さん、ぜひ肩の力を抜いて、大切なポイントを押さえた上で思い切った決断をしてみてください。新しい我が家で始まる未来の暮らしは、きっと素晴らしいものになりますよ。

2025年11月15日 株式会社OfficeDz えがおエステート 宅建士 藤原大三

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